こっそりひっそり
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思いつきなので短いです。
手をつなぐときのあの感じってどう表現したらいいんだろうと悩んで、なんか悩んでる鬼男君になった。
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手をつなぐときのあの感じってどう表現したらいいんだろうと悩んで、なんか悩んでる鬼男君になった。
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白い手のひらが揺れていた。
ぼくはそっと隣に立つ。
規則正しい歩行。
ふたりのずれたリズムに乗じて手の甲をこつりとぶつける。
ぼくらにだけわかる合図。
交差させた手首。
手を広げる。
ほどなく絡む指先。握り締める。
『さびしんぼ?』
ふふ、と肩が揺れた。
『…おそらく』
照れくさかった。置いて行かれたくなくて、置いて行きたくもなかった。
ちょうどの距離を探した指先が、いつものリズムを少しばかり借りた。
ふたりで歩く時は言葉も要らない。ぼくらのリズム。限りなくなにもないふりを装った。
(さびしい)
ちりちりとしたものが、指先を通じて伝わったのかもしれなかった。
手の甲。手首。肘。二の腕。肩。順番にぶつかる。あたたかい。
『やっぱりさびしんぼだねぇ』
くつくつと鳴らす声。ぼくは無言で、隣の足を小突いた。
リズムが一瞬揃って、太腿から膝、つま先まで重なるように寄り添う。
あたたかい。
ぼくは置いて行く側で、さびしいとかなんとか言えない立場で、よっぽどさびしいのはあなたのほうで。
置いて行く方はおいていかれた側の気持ちなんてきっと分かりやしないから全部は、でもおいていかれるのはぼくのほうなんだ。
息継ぎのない思考。を飲み込む。歩くリズムはまたずれていく。指先に力を込めた。握り返すのは同じくらいの強さ。
手をつないでいる間は。同じ行き先に、同じ目線と高さで。異質なもの同士でも。
(ああ、だからぼくはてをつなぎたい)
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